消化器疾患
消化器疾患
消化器疾患は、食道、胃、腸、肝臓など、食物の消化吸収や代謝に関係する臓器に起こる病気の総称です。口から体の中に入った食物や水分は消化管といわれる食道・胃・十二指腸・小腸・大腸を通りながら消化・吸収され最終的に便として体外に排出されます。また、肝臓は食物の吸収を手助けする胆汁の生成や分泌、私たちの体に必要な蛋白の合成や栄養の貯蓄、有害物質の解毒を行い、膵臓は消化酵素の分泌や血糖値を調整するホルモンの合成分泌を行っています。消化管は食物に紛れた異物が入り込みやすく、また、胃では消化のために非常に強い酸を利用することから様々な症状が出現する一方、肝臓や膵臓は沈黙の臓器と呼ばれ、異常が起こってもすぐに症状が出てこないことも珍しくありません。
強い酸性の胃液(胃酸)が胃の内容物とともに食道に逆流し、食道の粘膜に炎症が生じる病気です。胃酸が増えすぎてしまったり、胃酸の逆流を防ぐ機能がうまく働かなかったりすることで起こります。胃酸がのどまで上がってきて酸っぱいと感じるようになったり、胸やけやのどがヒリヒリしたりして不快感が続きます。喫煙、飲酒などの生活習慣や加齢、肥満、姿勢、食道裂孔ヘルニアなどが原因となります。
急性胃炎は、様々な原因で胃の粘膜に炎症を起こす病気で、急激に発症します。激しい腹痛や胃の不快感、吐き気などの症状を生じ、重症の場合は吐血や血便がみられます。広範囲なびらんを伴う病変を、急性胃粘膜病変と呼び、過度の飲酒や刺激の強い食べ物の摂取、ストレス、ピロリ菌感染、アレルギー、鎮痛薬・ステロイド・抗菌薬などの薬剤が原因と考えられています。現在、内視鏡検査が普及しており、粘膜の炎症状態を詳しく観察できるようになっています。
症状の原因となる明らかな異常がないのに慢性的にみぞおちの痛みや胃もたれなどの上腹部症状を呈する病気です。健康診断を受けた方の約15%、上腹部症状で病院を受診した人の約50%で機能性ディスペプシアが見つかるとも言われ、とてもありふれた病気です。命にかかわるような病気ではありませんが、生活の質(QOL)に影響するため、我慢せず適切な治療を受けることが大切です。
食物を分解する働きをもつ胃酸や消化酵素が、胃や十二指腸の壁を深く傷つけてしまうことによって起こります。胃粘膜がピロリ菌に感染することが主な原因として知られていますが、薬剤やストレスなどでも発症します。40代以降の方に多くみられますが、ピロリ菌に感染していると若い方でも発症することがあります。症状としてはみぞおちや背中の痛み、お腹の張り、吐き気、胸やけなどが生じます。潰瘍が深くなると出血することがあり、吐血や血便がみられます。
ヘリコバクター・ピロリ菌は、多くは幼少期に口から入り、胃の粘膜に住みつきます。萎縮性胃炎を引き起こし、胃潰瘍や十二指腸潰瘍だけでなく、胃がんの原因にもなります。内服薬で除菌をすることにより、胃潰瘍や十二指腸潰瘍を予防し、胃がんのリスクの低減が期待できます。最近は、免疫性(特発性)血小板減少性紫斑病や胃MALTリンパ腫と関連が指摘されています。
便秘症は、大腸や直腸の働きの異常による「機能性便秘」、便の通過が物理的に妨げられる「器質性便秘」、全身の病気の症状として起こる「症候性便秘」、薬の副作用で起こる「薬剤性便秘」に分けられます。便秘症の原因は幅広く、原因が異なれば治療法も違います。中には危険な便秘もあるので注意が必要です。強い腹痛や吐き気、発熱などを伴う場合や便に血が混ざる場合は自己療法で対処せずに、すぐに受診してください。
お腹の痛みや体の不調に伴って下痢や便秘などが数か月以上続き、検査をしても異常が見られない場合に最も疑われるのが過敏性腸症候群です。明確な原因は不明ですが、ストレスなど心理的要因が関連していると考えられています。腸内細菌、食物アレルギー、感染性腸炎も原因として挙げられています。