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糖尿病とは血糖値(血液中の糖分の濃度)が異常に高くなる病気です。2019年(令和元年度)の「国民健康・栄養調査」(令和2年度、3年度は新型コロナウイルス感染症の影響で中止)では20歳以上の糖尿病が強く疑われる人は男性19.7%、女性で10.8%でした。ここ10年間では有意な増減はありませんが率としては男女とも最も高くなっています。糖尿病は、体内での糖分調節がうまくいかないため慢性的に高血糖状態が続いた結果、合併症として様々な健康問題を引き起こす危険性があります。早期の診断と適切な治療が重要です。この記事では糖尿病について、解説していきます。
1.血糖値とは?
血糖値とは血液中に含まれるグルコース(糖分)の濃度のことです。通常、血糖値は自律神経系とホルモンの働きで厳密に調節されており、空腹時で70〜100mg/dL、食後1〜2時間で140mg/dL以下が正常範囲とされています。糖尿病は血糖値が持続的に高い状態ですが、血糖値は低すぎてもよくありません。
2.血糖値を調整するホルモン:インスリンの働き
先ほど血糖値は自律神経系とホルモンの働きで調整されていると書きました。血糖値を上げる作用と下げる作用が強調して血糖値を適切な範囲内で維持しています。血糖値を上昇させるホルモンはグルカゴンやコルチゾールなど複数ありますが、血糖値を低下させるホルモンはインスリンというホルモンしかありません。インスリンは膵臓(すいぞう)という臓器から分泌されており、血液中のグルコースを細胞内に取り込みエネルギーとして使用できるように働きかけることで血糖値を低下させます。しかし、インスリンが不足したり、うまく働かないような状態では血糖値が高くなり、最終的には糖尿病を引き起こします。
3.糖尿病の分類、1型と2型の比較
糖尿病には主に1型糖尿病と2型糖尿病の2つのタイプがあります。
1型糖尿病
1型糖尿病は免疫システムが誤って膵臓のインスリンを分泌する細胞を攻撃・破壊してしまう結果、インスリンが分泌されなくなり高血糖となります。好発年齢は若年層で発症することが多いですが、中高年でも認められます。膵臓でインスリンを分泌できないため、外から注射がインスリンを補うことが必要です。
2型糖尿病
2型糖尿病はインスリンの分泌量が足りなくなったりインスリンの働きが悪くなることで発症します。好発年齢は40歳以上に多いですが、若年発症も増加しています。肥満や運動不足や遺伝的要因が関与しています。生活習慣の改善や薬物療法によって管理が可能です。
4.糖尿病の診断
糖尿病は高血糖の慢性的な持続により診断されます。
例えば以下のような「糖尿病型」と呼ばれる状態が別の日で2回確認されれば糖尿病と診断されますが、他にも様々なパターンがあります。
糖尿病型
・血糖値
空腹時血糖値126mg/dl以上
75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)2時間値:200mg/dL以上
随時血糖値200mg/dl以上
・HbA1cが6.5%以上
5.糖尿病の治療
糖尿病の治療は主に食事療法、薬物療法などがからなります。糖尿病の治療は血糖値を適切にコントロールし合併症を防ぐことが目標です。また、血糖値が下がりすぎる低血糖を防ぐことも非常に大切です。
食事療法
糖尿病の管理にはバランスの取れた食事が重要です。カロリー、3大栄養素である炭水化物、タンパク質、脂質の割合を適切に調整します。血糖値の急激な上昇を防ぐために、食事は毎食きちんと食べる、野菜やおかずから食べるなどの食べ方、全粒穀物などの低GI食品を選ぶなどの対策も有効です。
薬物療法
薬物療法にはインスリン注射や経口血糖降下薬が含まれます。1型糖尿病の場合はインスリン注射が必須です。一方、2型糖尿病の場合は、食事療法に加え、経口薬やインスリンを使うことがあります。薬の種類や量は個々の症状や反応に応じて調整されます。
6.糖尿病を放置する危険性
糖尿病を放置すると様々な健康問題を引き起こすリスクがあります。長期間、高血糖の状態が持続すると、全身の血管を中心に様々な合併症を引き起こします。3大合併症と言われる眼の網膜症、腎障害、神経障害はじめ、心筋梗塞、脳卒中のリスクが高まったり、感染症になりやすい治りにくいなど命そのものに関わったり生活の質を落とすような健康障害を起こす危険性が高まります。
7.おわりに
糖尿病は、早期に発見し適切な治療と生活習慣の改善を行うことで健康な生活を維持することが可能ですので、気になる点があれば医師に相談してみましょう。