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健康診断の結果に「多血症の疑いがあります」と書かれていて驚いた経験はありませんか?「多血症」とは、血液中の赤血球が多くなる状態で、ヘモグロビン値(血色素量)やヘマトクリット値が基準より高くなると診断されます。これだけで必ずしも重大な病気を意味するわけではありませんが、原因によっては注意が必要です。中でも最近注目されているのが、多血症と「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)」との関係です。この記事では、多血症とOSAの関連性をわかりやすく解説し、必要な対処法や検査の重要性をご紹介します。
多血症とは?なぜ赤血球が増えるの?
まず「多血症」とは何かを簡単に整理しておきます。血液中には様々な細胞が流れ全身をめぐっていますが、中でも赤血球は、肺で取り込んだ酸素を体中に届ける重要な役割を担っています。多血症は、その赤血球が様々な原因で増えてしまい、結果、血液が“濃く”なった状態です。赤血球が増えてしまう原因には、
- 真性多血症
- 喫煙
- 高地生活
- 慢性肺疾患(COPDなど)
などがありますが、見逃されがちな原因のひとつが「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)」です。
睡眠中の無呼吸が血液を“濃く”する?
OSAは、寝ている間に何度も呼吸が止まったり浅くなったりする病気です。そして、呼吸が止まったり浅くなったりすると、呼吸による酸素の取り込み量が少なくなるため、身体は低酸素状態となります。実は、この「酸素不足」が、赤血球を増やす引き金になります。最近の研究では、以下のような報告もあります。
・OSA患者の中で、重症になるほど多血症の割合が高くなる傾向がある(有病率:約2〜6%)
・夜間の酸素飽和度(SpO₂)の低下が、多血症のリスクに直結している
・持続陽圧呼吸療法(CPAP)を行うことで、ヘモグロビン値やヘマトクリット値が改善する例がある
寝ている間に繰り返す「低酸素状態」により体が“酸素が不足している”と判断し、酸素の運び屋である赤血球をどんどん作らせている可能性があるのです。
睡眠時の無呼吸はなぜ見逃されやすいのか?
OSAは自覚症状が乏しいことが多く、特に日中に強い眠気がなければ、気づかれないまま長年放置されるケースも少なくありません。OSAの方の約半数は日中の強い眠気を感じていないという報告もあります。一方、多血症も自覚症状に乏しく、健康診断の血液検査で偶然見つかる場合が多いです。もし他に思い当たる原因(喫煙、薬剤、持病など)がない場合、「実はOSAが隠れていた」というケースもあります。
あなたはいくつ当てはまる?睡眠時無呼吸のセルフチェック
以下のような項目に心当たりはありませんか?いくつか該当する方は、OSAの可能性を一度検討してみる価値があります。
- 配偶者や家族に「いびきがうるさい」「息が止まっていた」と言われたことがある
- 朝起きたときに頭が重い、だるい
- 昼間眠くなる、集中力が続かない
- 高血圧や糖尿病を指摘されている
- 肥満傾向がある(BMI25以上)
- 健康診断で「多血症の疑い」と言われた
まずは、簡易検査から
当院では、多血症を指摘され問診からOSAが疑われる方には、まず、簡易検査(自宅で行える睡眠検査)から始めています。結果によっては、より精密な検査を行い、必要に応じてCPAP治療などをご提案しています。
多血症とイビキのある方は、睡眠時無呼吸症候群の検査を受けましょう
多血症と言われると、つい血液の病気を疑ってしまいがちですが、実は「睡眠」が原因のこともあります。閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、ただのいびきではなく、全身の健康に関わる重要な疾患です。もし健康診断で「多血症」と言われたら、その裏にOSAが隠れていないか、一度チェックしてみることをおすすめします。「ちょっと気になるかも」と思った方は、どうぞお気軽に当院までご相談ください。あなたの体が今、静かに発しているサインを、一緒に見逃さないようにしましょう。
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