
目次
京都市下京区西大路七条にある、おおば内科クリニックです。
「鉄のサプリやお薬を飲んでいるのに、なぜか貧血がよくならない」
当院は血液内科を標榜していることもあり、このようなお悩みを抱えて相談に来られる方は少なくありません。
本コラムでは、鉄分を摂っているのに貧血が改善しない原因について、解説します。
鉄でよくなるのは“鉄不足”が原因の貧血だけ
まず、大前提として、鉄分を摂って改善する貧血は鉄欠乏性貧血です。貧血といえば「鉄分をとればいい」と思われがちですが、実際、貧血の原因の多くは鉄欠乏ですから、大きく間違えているわけではありません。しかし、鉄欠乏以外にも貧血にはさまざまな種類があり、その原因も人それぞれ。もし鉄を飲んでも改善しない場合は、「本当に貧血の原因が鉄不足なのか?」を改めて見直す必要があります。
本当に鉄欠乏性貧血?―正しい診断が第一歩
鉄欠乏性貧血の診断には、血清鉄だけでなく、フェリチン(体内の鉄の貯蔵量)も重要な指標になります。例えば、慢性炎症が原因の貧血では、血清鉄が低くてもフェリチンは正常〜高値になることがあります。これを見落として「鉄が足りない」と判断してしまうと、必要のない鉄剤を飲み続けることになってしまうかもしれません。患者さんには、よく鉄分を「お金」にたとえて説明しますが、血清鉄を「現金」、フェリチンを「貯金」と考えると、“現金がない”という状態でも、貯金までなくなっているのか、貯金はしっかりあるのかで状況は大きく変わってきます。本当に鉄が足りていない状態(鉄欠乏性貧血)では、現金(血清鉄)も貯金(フェリチン)も両方不足している状態です。一方、慢性炎症などが原因の貧血では、現金は少なくても、貯金は十分にある。つまり鉄は体内にあるけれど、炎症の影響でうまく使えないだけ、というケースです。このような場合に鉄剤を追加してしまうと、鉄が余ってしまい、体に負担をかけることもあるため注意が必要です。
鉄剤を飲んでいるのに改善しないときに考えること
診断が合っていて、鉄剤も処方どおり使っている。それでも貧血が改善しない場合には、体が鉄をしっかり吸収できているかどうかや、他の要因が重なっていないかを丁寧に確認していくことが大切です。鉄剤には吐き気や胃の不快感などの副作用があり、無理をして続けるのが難しいこともあります。また、鉄剤を服用していても、体がうまく吸収できていないこともあります。
例えば以下のようなケースです。
- 胃酸の分泌が少ない
- 萎縮性胃炎がある
- ピロリ菌に感染している
これらがあると、鉄の吸収がうまくいかなくなってしまいます。最近では、吐き気が少ないとされるタイプの鉄剤や、点滴での治療も選択肢として用意されています。また、鉄分不足と他の原因が合併していることもあります。
隠れた原因がないか、改めてチェックを
鉄剤をしっかり使っているのに貧血が改善しない場合は、鉄欠乏性貧血の背景にある病気(基礎疾患)が見落とされていないかもチェックが必要です。
たとえば、
- 胃や腸からの出血(胃潰瘍、大腸ポリープなど)
- 女性では子宮筋腫や過多月経などの婦人科疾患
といった病気が原因となっていることがあります。このような病気が隠れていると、程度によっては鉄分の供給量以上に鉄を喪失してしまっています。いくら鉄を補っても出血によって補充量以上の鉄が失われ続けてしまい、改善が追いつかないということになります。
また、鉄以外の栄養素の不足や、他の種類の貧血が隠れている場合もあります。具体的には
- ビタミンB12、葉酸、亜鉛、銅などの造血に関わる栄養素の不足
- 腎機能の低下によって起こる腎性貧血 など
このようなケースでは、必要に応じて追加の血液検査や内視鏡検査などを行っていくことになります。
原因を見極めることが、改善への近道です
貧血でお困りの方は、「おおば内科クリニック」までご相談ください
鉄を飲んでいるのに改善しない――このようなときは無理に自己判断せず、ぜひ一度、原因を整理してみることをお勧めします。当院では、血液検査のデータだけでなく、生活背景や体調の変化もふまえた診療を行っています。気になることがあれば、お気軽に当院までご相談ください。
おおば内科クリニック
京都市下京区、西大路七条すぐ
TEL 075-315-2200
WEBなら24時間ご予約をお取りいただけます