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皆さん、「メタボ」というと、どのような状態を思い浮かべますか?「最近、食べ過ぎてメタボ気味」、「最近、メタボでやばい」という使われ方から分かるように、「メタボ」というと、いわゆる肥満の状態を想像される方が多いと思います。ざっくりそのイメージで正解です。ただ、厳密には「メタボ」、「肥満」、「肥満症」似ているようで異なります。今回は、そんな「メタボ」に関する解説です。
・メタボリックシンドロームとは?
「メタボ」は正確には「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)」といいます。内臓脂肪肥満をもとに、血糖高値、血圧高値、脂質異常症のうちいずれか2項目を合併した病態のことです。メタボリックシンドロームがあると心血管疾患の発症リスクが高くなることが知られています。
・メタボリックシンドロームの状況
厚生労働省の「令和元年国民健康・栄養調査報告」によると、メタボリックシンドロームが強く疑われる人は、20歳以上の男性で28.2%、女性で10.3%、予備群と考えられる人は、男性で23.8%、女性で7.2%でした。特定健診※の対象となる40~74歳で見てみると、男性でメタボリックシンドロームが強く疑われる人は29.8%、予備群は24.7%、女性で強く疑われる人は9.5%、予備群は7.2%でした。つまり40~74歳男性の2人に1人、女性の約5人に1人はメタボリックシンドロームに要注意という状況です。
※特定健診とは生活習慣病予防のために40歳~74歳の方を対象に行われるメタボリックシンドロームに着目した健診のことです。
・「メタボ」「肥満」「肥満症」はどう違う?
メタボの概念は先ほど解説した通りです。一方、イメージが似ている言葉で「肥満」と「肥満症」があります。大雑把にいうと、「肥満」はただ太っているだけの状態、「肥満症」は太っているせいで健康を害しているもしくはその危険性が高い状態です。「メタボリックシンドローム」「肥満」「肥満症」の定義や診断基準は以下の通りです。
・メタボリックシンドロームの診断基準
2005年に日本内科学会をはじめとする8学会によりメタボリックシンドロームの診断基準が発表されています。
<メタボリックシンドロームの診断基準>
1.必須項目
ウエスト周囲径が男性85cm以上、女性90cm以上
(内臓脂肪面積が男女とも≧100㎠に該当)
2.上記1に加え、以下の3項目のうち2項目以上を満たすものをメタボリックシンドロームと診断
①血中TG(中性脂肪)≧150mg/dlかつ/または血中HDL-C(善玉コレステロール)<40mg/dl
②収縮期血圧(上の血圧)≧130mmHgかつ/または拡張期血圧(下の血圧)≧85mmHg
③空腹時血糖≧110mg/dl
高TG血症、低HDL-C血症、高血圧、糖尿病に対する薬物療法を受けている場合は、各項目に含まれます。
・肥満の定義
体格指数(BMI:body mass index)で評価します。BMIは体重[kg]を身長[m]の2乗で割って計算されますが、BMIが25以上が肥満に分類されます。肥満は身長に比較して体重が重い状態です。
・肥満症の定義
肥満(BMIが25以上)で、肥満によって以下に記載するような11種類の健康障害(合併症)が1つ以上あるか、健康障害を起こしやすい内臓脂肪蓄積がある場合に診断されます。
<11種類の健康障害>
- 耐糖能障害
- 脂質異常症
- 高血圧
- 高尿酸血症・痛風
- 冠動脈疾患:心筋梗塞・狭心症
- 脳梗塞:脳血栓症・一過性脳虚血発作
- 脂肪肝
- 月経異常、不妊
- 睡眠時無呼吸症候群(SAS)・肥満定款貴症候群
- 運動器疾患:変形性関節症・変形性脊椎症、手指の変形性関節症
- 肥満関連腎臓病
・メタボリックシンドロームの危険性
メタボリックシンドロームは脂質異常、血圧高値、血糖高値があることから、心筋梗塞などの心血管疾患のハイリスク群です。たとえば、端野・壮瞥町研究ではメタボリックシンドロームは非メタボリックシンドロームと比較して心血管疾患の相対リスクが2.2倍に増加することが示されています。これは、メタボリックシンドロームの人はそうでない人と比較して心筋梗塞などの心血管疾患を起こす確率が2.2倍高いということになります。
・メタボリックシンドロームを予防するには
メタボリックシンドロームでは個々の危険因子それぞれの治療も大切ですが、内臓脂肪の蓄積が基盤にあるため、食事や運動を含めた生活習慣の改善を通じて、内臓脂肪を減らすことが大切です。半年で3%の減量は、血糖、血圧、脂質異常のいずれも改善が期待出来るとされます。食事からのエネルギー摂取量を適正に維持し、まずは1日5000歩程度のウォーキングから始めてみましょう。
・まとめ
本記事では、メタボリックシンドロームの概念や診断基準、肥満や肥満症との違いを解説しました。メタボリックシンドロームがあると、心血管疾患を起こしやすいことが分かっています。適切な生活習慣の維持、定期的なメディカルチェックを受け、早め早めに対処していきましょう。
・参考文献
・小山英則. “メタボリックシンドローム”. 今日の治療指針: 私はこう治療している. 福井次矢ほか編. 2024年版, 医学書院, 2024, p.763-765.
・厚生労働省. 令和元年国民健康・栄養調査報告. 令和2年12月. https://www.mhlw.go.jp/content/001066903.pdf, (参照 2024-08-14).
・“メタボリックシンドローム”. 肥満症診療ガイドライン2022. 一般社団法人日本肥満学会編. 2022, p.18-27.
・“肥満と肥満症について”. 一般社団法人日本肥満学会. http://www.jasso.or.jp/contents/wod/index.html, (参照 2024-08-14).