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日常生活の中で、「貧血」という言葉を聞いたことがある方は多いでしょう。
貧血は世界的にも大きな問題として認識されています。
例えば、世界保健機関(WHO)では2025年に向けて生殖年齢女性の貧血を半分にする目標を掲げています。
貧血の主要な原因は鉄分不足ですが、それだけではありません。
ここでは、貧血の基本的な概念から、原因、症状、診断、治療法について解説したいと思います。
貧血とは?
貧血とは「血液中のヘモグロビン濃度が減少している状態」のことです。ヘモグロビンは血液中の赤血球の主要な成分で、肺で取り入れた酸素を全身に運ぶ役割を担っています。赤血球やヘモグロビンが不足すると体内の組織や臓器が必要な酸素を十分に受け取れなくなるため様々な症状が出現します。
貧血の有病率
2023年にTakeshima らが、「貧血の有病率は15.1%、全国に約1,590万人の患者がいる、貧血患者の多くは未治療で、ヘモグロビン濃度8~12 g/dLの患者の半数以上、6~8 g/dLの患者の40%以上が未治療」という報告をしています[1]。貧血はゆっくり進行すると症状が出にくいため、貧血が有るにもかかわらず気付いていない方が多くおられると推測されます。
貧血の分類
視点の違いにより様々な分類方法がありますが、ここでは一例として貧血時の赤血球サイズによる分類をお示しします。実際は血液検査のMCVという項目で評価します。赤血球が通常より小さくなっている貧血を小球性貧血、変わらないものを正球性貧血、大きくなっているものを大球性貧血と分類します。
小球性貧血:鉄欠乏性貧血、鉄芽球性貧血など
正球性貧血:再生不良性貧血、腎性貧血など
大球性貧血:巨赤芽球性貧血、骨髄異形成症候群など
注意点として、例えば鉄欠乏+ビタミンB12欠乏のような複数の要因が合わさっている場合、小球性+大球性で正球性に見える場合もあります。
正球性貧血なら鉄欠乏ではない、といった判断は出来ないため注意が必要です。
貧血の症状
程度にもよりますが、倦怠感、動悸・息切れ、めまい、頭痛、顔が青白い、集中力の低下、心雑音、浮腫みなどの症状があらわれます。ゆっくりと貧血が進行するような場合では、重度の貧血になるまで自覚症状が出ない方もおられ、健康診断などで偶然見つかる場合もあります。
貧血の種類と原因
以下に示すように貧血の原因は様々です。治療法も異なるため何が原因で貧血になっているかを明らかにすることが非常に大切です。
鉄不足、ビタミンB12不足、葉酸不足、亜鉛不足、銅不足、慢性炎症、腎不全、赤血球寿命の短縮、骨髄の異常、出血、がん、などなど
貧血の原因の中で多くを占めるのは、鉄やビタミンB12などの栄養不足です。日本人女性の10%が鉄欠乏性貧血ともいわれます。
貧血の診断
貧血やその原因を調べるためにはどのような検査が必要なのか見てみましょう。
・血液検査(採血)
貧血と診断するために必須の検査です。なぜなら、貧血=血液中のヘモグロビン濃度の低下、で定義されているためです。WHO(世界保健機関)の定義では、血液中のヘモグロビン濃度が男性は13g/dl以下、女性12g/dl以下とされています。下まぶたの裏側を確認(アッカンベーをしてみる)し、白っぽくなっていると確かに貧血が疑われますが、血液検査でヘモグロビン濃度を測ってみないと確定はできません。血液検査ではヘモグロビン濃度以外にも赤血球や白血球、血小板の数、ヘマトクリット値、鉄分、ビタミン、肝機能、腎機能などを測定します。
・骨髄検査
多くの場合は血液検査のみで十分ですが、中には血液検査では原因がはっきりしない場合があります。また、白血病や再生不良性貧血など血液の工場である骨髄の異常が疑われる場合には骨髄穿刺や骨髄生検を行います。
・胃カメラ、大腸カメラ、超音波検査、CT検査など
胃がんや大腸がんなどの悪性腫瘍が隠れている場合があるため、胃カメラや大腸カメラ、画像検査を行う場合もあります。
貧血の治療
ここまで見てきたとおり、貧血原因は多岐にわたります。原因によって治療法も異なります。鉄分やビタミンなどが不足しているものがあれば補う、免疫の過剰反応が原因であればその反応を抑える、出血しているなら出血を止める、白血病などの血液の悪性の病気なら抗がん剤治療、などが行われます。
おわりに
今回は貧血に関する総論的な内容をお伝えしました。貧血の様々なタイプに関して解説した記事もありますので参考にしてみてください。
参考記事